私は幼き頃から
死についてよく考え悩み過ごしていた。
大人達は様々な宗教上の世界や
医学的な事を教えてくれたが
それは、私にとって
砂漠で飲み水が欲しい時に
ビスケットを渡されたような物で
気休めにならず
かえってより悩みが深くなった。
たまに荷が重くなり
救いを求め何重にも鍵のかかった
冷たい自宅を抜け出した。
やっと息ができ
身体をあたたかな風が撫ぜる。
1人歩き亡骸を探しては
眺めしばらく呼びかけて過ごした。
真っ赤に染まる夕日が消え
月の光が見えぬ程街灯に照らされた
暗い世界を背景に
ただただやり切れない
大きな寂しさと孤独。
それらを亡骸と重ね深く穴を掘り埋めた。
何故死ぬのだろうか。
何故生きているのだろうか。
長年の問いは答えが出なかったが
ランドセルから離れる頃
自分の肉体は
乗り物であると気がついた。
しかし、自分の枠からは
到底離れられなかった。
それが、22歳になり
家族に友、仕事に都会。
色々と嫌になり。
死をむかえず結果
7000円をポケットに忍ばせ
気が付くと
目的とあての無い旅をしていた。
ただ、俗世を離れたと思っていたが
そこも社会であった訳で。
結果は同じでありうんざりしてしまい
さらに、人から離れる為、旅を続けた。
民家や田畑も無くなる。
人が住めないそんな場所。
ある水場に辿りつく。
飛沫が身体に触れる。
あまりの美しさ清らかさ。
大地が日本が地球が脈打っていた。
なんて、優しいのだろうか。
なんて、暖かいのだろうか。
なんて、美しいのだろうか。
涙か鼻水か汗なのか
ぐちゃぐちゃになりながら
言葉にならぬ声で赤子のように叫び続け
知らぬ間に喉が枯れ
水に揺蕩い
気が付くと
もうそこには
自分が無くなっていた。
自と他の境が消え失せた。
そこから、森羅万象全ての物が
美しく尊く愛おしくなった。
それが、初めて感じた
大きな愛と自分の路の始まり。
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